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クイーン・ハリシュの一行が事故死

Attention

このブログに掲載した写真は、2008年来日時に撮影したものです。
無断転載複製はご遠慮ください。

ラジャスタン事情に詳しいダンサーの一人、Madhuさんを通じ、クイーン・ハリシュ(Queen Harish、本名 Harish Kumar) が2019年6月2日の朝、同乗のミュージシャンとともに、高速道路で交通事故死したことを知りました。1979年生まれ。享年40才。

Queen Harish

Photo by HAVEN

映画「ジプシー・キャラバン」出演をきっかけに、インド国外の公演が増え、日本にも公演に来ています。招聘したのは、株式会社Plankton の 川島恵子様。
株式会社 プランクトンからも、追悼の言葉があります。
また、当時の公演情報があります。

ファンファーレ・チォカリーア 2008
ゲスト・ダンサー クイーン・ハリシュ(from ラジャスタン)

彼のダンスを観た観客は、初めて見る旋回舞踊の迫力に目を奪われ、特に日本のインド舞踊の関係者、ベリーダンサーには、非常に人気がありました。後に現地に習いに行く人も続出します。
これが、映画「ジプシー・キャラバン」で映し出された、驚きの旋回。

クイーン・ハリシュとの思い出

私にとっても、強烈な印象を持つダンサーです。
数度の来日のたびに再会を喜んでくれたなぁ。また、国内での細かなイベント主催者候補を尋ねてきたり、推薦コメントを頼んで来ることもありました・・

2008年来日時、大阪でのプランクトン主催以外でのイベントに出演、私は撮影で関わりました。さらに、また観たくなって、結局、兵庫・滋賀の公演にも足を運びました。
2012年にも伊丹市のホールで踊っていました。

Queen Harish

Photo by HAVEN

最後に来たのは2014年。ジプシー音楽ブームが去ったためか、日本に来る機会はないまま時が過ぎ、私がついに、ジャイサルメールを訪れたのは2019年。
連絡すると
ようこそ、ジャイサルメールへ。ゴールデンシティ、ジャイサルメールを楽しんでね。
ありがとうございます!」
「どういたしまして。私のショーにも来てね
これが、最後のやり取りでした・・・。スケジュールの都合で行くことは叶わず、また来年くらい・・と思っていた矢先でした。
すぐには信じることができませんでしたが、現地のMadhuさんと親しいミュージシャンも現地で確認してきた、と。また、ヒンディ語や英語メディアをたどると、時間が経つにつれて非常に多くの記事が現れ始めました。現実なんだね・・・。

・Famous folk dancer Queen Harish, three other artistes die in accident near Jodhpur
・Famous Folk Dancer Queen Harish, Three Others Killed in SUV-Truck Collision Near Jodhpur

・एक लड़का जो ‘डांस क्वीन’ बन हुआ मशहूर, ईशा अंबानी की शादी में परफॉर्म कर हरीश ने बटोरी थीं सुर्खियां

गरीबी और मजबूरी ने हरीश को बनाया था ‘क्वीन हरीश’, बहनों के पालन-पोषण के लिए विदेशियों के सामने बनते थे लड़की 
概要:

ラジャスタン州ジョードプル近郊の交通事故で、世界的に有名なダンサー、クイーン・ハリッシュと他の3人のフォークアーティストが死亡、5人が負傷した。
被害者がSUV(Special Utility Vehicle)でJaisalmerからAjmerに向かっていたときに、事故はJodhpurの高速道路上のKaparda村の近くで発生。
Bilara警察署のSitaram Khojaによると「彼らの車は停車中のトラックに衝突し、Harish、Ravindra、Bhikhe Khan、Latif Khanが死亡した。その他5人が事故で怪我をした。
彼らの家族も到着した。一次調査では、Harishのフォークアーティストチームがイベントの関係で旅行していたことが明らかになった。」
中には、かなり生々しい事故当時の映像があり、車の前半分は完全に形をなしていません。当時、かなりのスピードで衝突したことが推測されます。


インド首相も、ラジャスタンの芸能にとって、彼らの死がとても大きな損失である、とコメントしているそうです。
ハリッシュは、観客の引き込み方、盛り上げ方が本当に上手で、最後は舞台に観客をたくさんあげて、パーティタイムで大盛り上がり。終演後も観客と最後まで話し込んで、笑って。音楽家たちの演奏する超絶技巧を駆使した音色も、どんどん観客のテンションを盛り上げていく。そんな風景が印象的でした。
ただの民族芸能というだけでなく、現代的なアレンジを絶妙に盛り込み、時代を超えた美しさを引き出して表現する巧妙なセンスや賢明さを持ち合わせていたのでしょう。

パフォーマンスには彼の人生が投影されている。
体を張っていることはもちろんだが、にじみ出てくる情熱に心を打たれる。
視覚に訴えるばかりでなく、選曲にしても完璧でその曲はいつまでも心に残る。

TripAdvisor)

Queen Harish 最後のパフォーマンス

最後の方、回転し続ける間中、連足の着地点がすべて同じ、という信じられないような体重移動が素晴らしいです!ここまでの技術はなかなかお目にかかれません。
私は撮影なのであまり話す機会がなかったですが、餞として、彼の踊りに対する言葉を遺します。
そして、インドも日本も、交通安全にだけは、くれぐれも、気をつけて。
事故で失わなくて良い命まで失わないために。
ご遺族の方々にも、謹んでお悔やみ申し上げます。

こちらは、同乗者のマンガニヤール(楽師)、Ratifの歌声。場所は、奇しくも先日のインド旅行で泊まった宿・・・

クイーン・ハリシュの言葉

「自分は男性だけど、ステージ上では世界で一番セクシーって思ってるよ!そう心の底から思えないとステージ上でもあの表情はできない」
「ステージ上で、みんなはアクター・アクトレスであるわけだけど、その感情は自分の引き出しから出す本物であること、そうすればお客さんには愛が伝わる」
(引用元 BellyDancer Yuuri Blog
「私にとって重要なのは芸術であり、性別ではありません」
(引用元 Dance like Queen Harish)
心の何処かにこれらの言葉や記憶に留めること、そうすることで、彼はその中で永遠に生き続けることができるのでは、と思っています。

クイーン・ハリシュ プロフィール

クイーン・ハリシュ

ラジャスタン州ジャイサルメール出身。1979年生まれ。女装して砂漠民のジプシー・ダンスやベリー・ダンスを踊る。18歳の時からダンサーとして世界中を放浪し、世界中のダンス、アラビックのダンスにフラメンコ、パフォーミングアートまで体に吸収し、コンテンポラリー・ダンサーたちからパントマイムや身体表現を学んだ。

インドのジプシー・バンド「マハラジャ(Maharaja)」や「ムサフィール(Musafir)」に参加。現在はソロで活動している。
パフォーマー、俳優、振付師、ラジャスターンダンス(Ghumar、Kalbelia、Chang、Bhavai、Chari)・ボリウッドダンス・宮廷ハレムムジュラ・コンテンポラリーフュージョンダンスをレパートリーとする。
 
ドキュメンタリー音楽映画「ジプシー・キャラバン」には「マハラジャ」のメンバーとして出演しており、この中で、ジプシー発祥の立て膝で大きく回転するダンスは自分しかできない、と語っている。
クイーン・ハリシュはもともと音楽家のカーストではなく、Suthar(大工)コミュニティに属していたが、12歳のとき、母がガンで死亡、その半年後に父親も死亡。古い家が1軒あるのみで、経済状態は悪く、食べるものもなかった。子供の頃から。踊るのが大好きだった彼は、2人の姉妹という家族を養う責任があったため、朝は郵便局で働き、夕方は外国人観光客のために女装で踊り始めた。初期は1回50ルピーを稼いでいた。ここで、Queen Harishという名前をつけた。(雑誌Entertainment インタビュー)。
女装して踊るということは、容易な決断ではなかった、彼は嘲笑と拒絶に直面した。しかし彼は決してあきらめなかった。
そして今ではラージャスターンを代表するダンサーとして世界中で公演を行えるようになった。
現在、家族は妻と2人の子供、2人の姉妹で、Harishの稼ぎで生計を得ていた。

出演映画

ジプシーキャラバン(When the Road Bends: Tales of a Gypsy Caravan)

(監督:ジャスミン・デラル)2008年日本公開
タラフ・ドゥ・ハイドゥークス(Taraf de Haïdouks) が声を掛け、ジプシー(ロマ)をルーツとする5つのバンドが北米を回ったツアー、“ジプシー・キャラバン・ツアー”に密着した音楽ドキュメンタリー。
ルーマニアやマケドニアなど彼らの国で撮影されたプライベートからは、最近までジプシー迫害の中に生きてきた日々や、今でも冠婚葬祭で演奏する彼らの姿も垣間見られる。
解説

遺族支援ファンド

下記の遺族支援のファンドが掲載されていました。

Please Help raise funds for the family of Queen Harish

交流のあったNourahさんの投稿より、このファンドの紹介とともに引用いたします
(Nourahさん許諾済み)。
「ハリシュや彼とともに亡くなったミュージシャンや彼のダンス学校関係者などを含めると、彼は大家族を養ってました。
実は、生前彼から頼まれ、数年前ジャイサルメールに立ち上げたハリシュのダンス学校のため、彼の衣装を売ってお金を送ることになってました。
2014年彼の最後の来日公演後預かり、その後毎回ノーラの衣装セール時には出品していましたが、なかなか売れなかった彼の衣装がとうとう今年5月に譲り受ける方が現れたのでした。
ハリシュ来日時にはその衣装を着て、ハリシュからダンス習おうね♪ となっていたのに、その夢が叶わず、衣装を購入した彼女にとっては形見分けになったのでした(涙。
この衣装代は、毎年、年の2/3はハリシュの元で修行しハリシュたちと家族同然の友人が近々ジャイサルメールの家族の元駆けつける予定なので、彼女経由でご家族の元に渡されると思います。
が、彼のご家族、また彼が愛するダンスやラジャスタンの芸能を伝えるために作られた学校は大黒柱を失って、どうなってしまうのか?、養う人はいるのか、後を継ぐ人材は育っているのか?、、、など思っていたところでした。
このファンディングが確かに彼のご家族に渡り、糧になることを祈りながら、リンクシェアさせていただきます。」
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2022年現在、このファンドは終了しています。
映画監督のニーラジ・パンデイは、ハリッシュの子供たちの教育を後援することを約束したとのこと。

追記:
6月3日 葬儀が行われました。どうか安らかに。。。