「音楽、旅、人生〜ジプシーを追いかけて」

ロマ音楽の魅力と歴史

ロマ音楽は、その豊かなリズムと感情的なメロディーで多くの人々を魅了しています。

ロマ民族の長い旅と共に進化してきたこの音楽は、世界中で多様なスタイルと形態を持ち、その独特のサウンドが多くの音楽愛好家に深く愛されています。

本記事では、音楽評論家 関口 義人さんの講演「音楽、旅、人生〜ジプシーを追いかけて」が、アジア図書館で開催された模様をお伝えします。

ロマ音楽に詳しい音楽評論家、関口義人さん

撮影:Yoko

関口さんは、元々音楽一家でした。

講演では、25カ国、300カ所のロマたちや音楽家を尋ね歩いたときの、様々な話や写真、動画を見せていただきました。
1985年、関口さんがパリにいたとき、テント内で演奏やダンスを見たのが、最初のロマ音楽体験だったそうです。
1997年、ロマ民族の取材を始め、今年で20年。6冊のロマ関連の本を出版されています。
2000年前後、ロマ音楽や映画、ダンスがブームになり、ライナーノーツや様々な雑誌にライターとして記事を書くようになりました。
ヒップホップにもお詳しい方です。

ロマ音楽の起源と進化

ロマ民族は、インド北西部に起源を持つと考えられており、中世のヨーロッパに渡って以来、多くの文化と交わりながら独自の音楽を発展させてきました。彼らの音楽は、悲しみや喜び、希望や絶望といった人間の感情を鮮やかに表現し、聴く人々に強い印象を与えます。

主要な楽器とその特徴

ロマ音楽に使用される楽器は、多様でありながら独特の音色を持つものが多いです。ヴァイオリン、アコーディオン、ギター、ツィンバロン(ハンガリーの伝統的な楽器)などが代表的です。これらの楽器は、ロマ音楽の特徴的なサウンドを形成し、その旋律に豊かな表現力を与えています。

(注)ジプシーは軽蔑的意味合いがあり差別用語、放送禁止用語と見做されています。そのため、今日ではRoma(ロマ)、Romany(ロマニー)と言い換えられる傾向にあります。

ロマの呼び名

世界全体で約700万〜800万人と推定される。中背,褐色の皮膚,黒髪が特徴で、言語は、ロマニー語と呼ばれています。仕事は、馬の飼育,売買,鍛冶(かじ),占い(女子)などに従事していました。その音楽や舞踊は祭礼などでは歓迎される面もあったのですが,地域住民から差別と迫害を受けてきました。とくにナチスは1933年から絶滅政策をとり,約50万人が虐殺されたという悲惨な歴史があります。

元々、定住生活をせず、文字も持たない人たちだったため、歴史についても、伝わっていなかったり、話が変わってしまったり、謎に包まれた部分も多いそうです。
ロマとみなされている民族を大きく分類すると、3つに分かれます。

1.Rom

19世紀に現代のルーマニアに当たる地域で奴隷とされたロマニ系の人々。独自の文化や慣習を固守し、キング(王様)も存在する。ルーマニア、ルーマニア語圏に居住するロマニ系の民族。

2.Lom

南コーカサス(アルメニア等)とアルトヴィン(トルコ)に居住する民族。欧州方面へ移動するロマの集団から別れ、11世紀頃の当地に留まった人々が先祖と考えられている。

3.Dom

主に中東のイスラム圏に居住するインド・アーリア人系の民族。彼らの話すドマリ語(Domari language)はロマ語と密接な関係にあると考えられている。
また、基本的に男性優位の社会を形成し、楽器を奏でるのはほぼ男性のみです。

ヨーロッパで迫害を受けることもあると同時に、自由な生き方や、音楽のアレンジに秀でた才能に憧れを持つ人もいました。そして、既成概念にとらわれない斬新なアレンジは、西洋音楽にも大きな影響を与えています(ある意味、幻想もかなり入っていたりします)。
シューマン「流浪の民」
サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」
ブラームス「ハンガリー舞曲」
モンティ「チャールダーシュ」
ラヴェル「ツィガーヌ」
そして、順は前後するかもしれませんが、西洋音楽教育を受けたロマ音楽家が、ロビー・ラカトシュ(Robby Lakatos, Hungary)
来日もしている超絶技巧を持つバイオリニストです。

ロマ音楽の特徴

ロマの音楽は、地域によって特徴がいくつかあります。
1.弦楽アンサンブル(バイオリン、ツィンバロム、コントラバス)ハンガリー、ルーマニア、チェコ
2.ブラスバンド(オーケスター)セルビア、マケドニア、ブルガリア
3.歌謡(フォーク、歌謡曲、ポップス)全域
4.フラメンコ(カンテ、バイーレ、トーケ)スペイン
そして、トルコにも、独自に発展した音楽が残っています。
ヨーロッパ側(ケシャン、エディルネ、クルクラレリ)、アンカラ、イズミール、アンタルヤ、イスタンブール

トルコのクラリネット(ロマ音楽)

私がトルコで聞いたロマ音楽では、特にクラリネットが独特です。
クラリネット属だけでも20種類くらいあるらしく。。。
トルコにも行かれた音楽大学の先生によると、トルコのクラリネットは、ソプラノクラリネットの中で最も管の長さが長い金属製G管(ゲーカン)のものが主流のようで、日本では、まず売っていない。
サイズが大きいので手の小さい人には不向きだそうです。運指も独特なのだそう。


日本では、ほとんどの奏者はフレンチクラリネット(ベーム式(フランス式))を演奏するそうです。
他に、エーラー式(ドイツ式)は、オーケストラで使われることが多いようです。
こちらにもクラリネットのことがいろいろ載ってます。
この演奏を聴いていただくとお分かりになるかと思います。
ほんとうに、きれいで、独特の音ですよ!

関口さんの著書のご紹介